キャリアプラン
村島 美穂 先生-留学体験記
名前 : 村島美穂 Miho Murashima
留学タイミング: 卒後3年
留学先: アメリカ
留学目的: 臨床留学、臨床研究
―留学を希望するまで、なぜ留学を望んだか
大学を卒業後、私は舞鶴市民病院で初期研修を受けました。当時、舞鶴市民病院では、アメリカから指導医を招聘し、その指導医の先生に症例提示を行い、指導をいただくという制度がありました。病歴や身体所見の取り方、鑑別診断のたて方、鑑別診断から、どのような検査を行うかなどの考え方を学び感銘を受け、アメリカに臨床留学して、もっと、臨床や臨床教育を学びたいと思いました。
―留学先を決定するまで、どうやって決めたのか
当時はまだ、マッチングシステムが導入される直前でしたので、舞鶴でお世話になったアメリカの指導医の先生方のいらっしゃる病院やその関連病院を中心に応募しました。アメリカの指導医の先生から推薦状をいただけたのは大いに有利に働きました。結果、ペンシルバニア大学の関連病院であるペンシルバニア病院に行くことができました。
―留学するまで、何か必要か、何を準備すべきか
臨床留学をするならアメリカ医師免許の取得が必須となります。私はUSMLEのSTEP1, STEP2を国家試験の勉強と並行して行い、学生の間に合格し、研修医3年目に、Clinical Skill Assessmentに合格しました。USMLEの制度は年々変わっていますので、最新の情報を調べてあらかじめ試験勉強、受験の予定をたてていただければと思います。
―留学してから
私は当時独身で、一人で渡航しましたが、5年間の留学を乗り切れたのは、同時期にフィラデルフィアに留学していた日本人仲間のおかげです。月1回くらいのペースで、日本人仲間で集まり、夕食を食べに行くのをとても楽しみにしていました。生活のこと、税金のことなどおしえていただきました。また、なかなか仕事がうまくいかなくてつらかったときに相談にのってもらったり、愚痴を聞いていただいたりしました。
私は、アメリカに渡航するときまだ、内科領域の中で何を専攻するか決めていませんでしたが、ペンシルバニア病院でDr. Ntosoという素晴らしい腎臓内科の先生に出会い、腎臓内科を専攻することに決めました。Dr. Ntosoの推薦状のおかげで、ペンシルバニア大学のフェローシップに合格することもできました。
渡航前には研究のことはあまり考えていなかったのですが、フェローシップに進んでから、臨床研究に興味を持ち、Dr. Feldman, Dr. Brunelli, Dr. Townsend, Dr.Cohenといったすばらしい指導医の指導のもと、臨床研究の基礎を学びました。結局、日本に帰国してからになりましたが、アメリカで始めた研究を論文化することもできました。アメリカで学んだ臨床研究の基礎はいまだに私が研究を続けている礎となっています。貴重な経験でした。
―帰国してから
アメリカで臨床留学して思うのは、アメリカの臨床教育、臨床研究には素晴らしいところもたくさんあるけれど、いいところばかりではないということです。
アメリカのいいところは、卒後教育が非常に重んじられていて、例えば、指導医は研究医指導の義務期間には外来などの臨床業務を免除されます。日本では、卒後教育は指導医側の完全なボランティアであり、教育をしたからといって余分な給料をもらえるわけでもなく、普段と同じだけ外来も病棟業務もしなければなりません。もっと教育に評価が与えられるようなシステムになってほしいと願いながら、帰国して15年、変わらないままです。今後、変わっていってほしいと強く願っています。
一方でアメリカの悪いところは、専門が細分化されすぎているというところで、例えば、麻酔科医以外は基本、挿管はできません。腎臓内科医であっても、エコー技師としての資格がないので、腎エコーをすることはできません。
アメリカで臨床留学をした人間として、私の目標は日本のいいところ、悪いところを認識したうえで、医学教育、臨床研究に関わっていきたいということです。臨床研究についても、私の中で常にあるのは、日本と海外の違いに目をむけた研究をということです。CKD-MBD領域の研究に携わってきたのも、海外と日本では、人種差や、食生活の違いからか、CKD-MBDマーカーとアウトカムの関連や、薬剤に対する感受性は異なっているからです。また、私にとって思い入れのある研究である、PDとHDの併用療法の研究は日本独自の臨床を世界に知ってほしいという気持ちからです。
―海外留学を目指す先生方へのメッセージ
海外留学をすれば、日本のいいところ、悪いところがよく見えるようになると思います。留学をしてそのまま外国に居残るのではなく、日本に帰国して、今後の日本の医療、医学教育をぜひ、よりよいものに変えていってほしいなと思います。