キャリアプラン

山原 真子 先生-留学体験記

名前:山原真子 Mako Yasuda-Yamahara
留学タイミング:卒後10年目、学位取得後1年
留学先(国):フライブルク大学、ドイツ
留学中の研究領域:腎糸球体ポドサイトにおける細胞接着機構について

―留学を希望するまで、なぜ留学を望んだか

留学をしようと強く希望していたわけではありませんでした。学位取得後、偶然にも留学のお話をいただき、ちょうど研究に対する興味がわいてきていたので、思い切って留学を決めたのが実際のところです。

―留学先を決定するまで、どうやって決めたのか

私の夫も腎臓内科医で研究を行っており、夫婦2人をポスドクで受け入れてくれるというラボがなかなか見つかりませんでした。アメリカでラボを構えておられる私の医局の先輩から、「ドイツでポスドクを探している友人がいる」という話を伺いました。そのラボは私たち夫婦の研究領域と同じ領域のラボであり、そのラボから夫婦2人ともを受け入れていただけるというありがたいお話をいただきました。本当に幸運だったと思います。

―留学するまで、何か必要か、何を準備すべきか

突如として留学を決めたため、準備はあわただしいものでした。まずは留学助成金やフェローシップなど応募できるものを検索し、可能な限り応募しました。学内から1人しか応募ができないなど条件があり、夫も同時に申請するタイミングであったため、どれに応募するかを話し合って応募していました。採用に際しては、やはり業績があるとないとでは差がある気がします。学位取得前に応募したもの(締切の都合上)は残念な結果でしたが、学位取得後に応募したフェローシップを無事いただくことができ、留学が実現しました。ですので、大学院時代に業績をできるだけ積み上げておくことをお勧めします。
日本生活の整理や、海外生活の立ち上げなどにも苦労しました。平日に手続きを進めないといけないことも多く、同僚には仕事を代わってもらうなど迷惑を掛けました。また、海外では仕事がきちんと流れないことが多いので、日本基準で考えていると思わぬ事態になることがあります。余裕を持った準備をしておくことをお勧めします。
語学に関してはできた方が良いので、あらかじめ語学力を磨くなどするべきかと思います。私の場合は、ほとんど準備ができていなかったので、根性と愛嬌で何とかしていました。
最も大切なものは、おおらかでしなやかな心です。トラブルが起きても笑って楽しみましょう。

―留学してから

日本では主にポドサイトの障害機構についての研究を行っていましたが、ドイツではポドサイトにおける各種たんぱく質の生理的な役割について研究しました。実験手技や考え方など多くのことを学ぶことができ、非常に充実した時間でした。ドイツのラボでは多くがドイツ人でしたが、他国からの留学生もおり、ラボでのディスカッションは英語で行われていました。ランチやティータイムでいろんな話をしたりして、多くの友人ができたのもよかったです。帰国後も連絡を取り合うような仲が続いており、これからもずっと大切にしていきたいです。

―キャリアプランとしての海外留学のメリット

1度しかない人生ですので、ぜひチャンスがあれば留学をおすすめします。キャリアプランにおけるメリットよりも、人生におけるメリットが大きいと思います。日本を離れた環境で仕事をすることで、海外と日本の違いをあらためて比較・実感できます。その結果、あなたの人生観や哲学が大きく変わると思います。

―留学に際して、腎臓領域の医師/腎臓学会会員でよかったこと

腎臓は幅広い領域を担当している臓器ですので、生理機能や病態機構の解明など研究テーマを設定しやすいのではないでしょうか。留学となると、日本での研究領域と留学先での研究領域が完全に一致しないこともあると思いますが、腎臓という臓器は研究領域が広いので、様々な切り口を学ぶことで、自身の研究の世界が広がります。
腎臓学会学術総会などで様々な海外のラボの先生方と直接お話する機会があります。実際、私も腎臓の学会で留学先のラボのボスと面接を行うことができました。また、学会のネットワークを通じて、留学経験のある先生方をご紹介いただき、いろいろお話を聞くことができたのもありがたかったです。さらに、留学先の学会で知り合った腎臓内科の先生方とまた学会などで会えるといった同世代での横のつながりも広がりました。

―海外留学を目指す先生方へのメッセージ

人生、どこでどんな出会いやチャンスが訪れるかわかりません。不安も多いかもしれませんが、飛び込んでみると結果的にとてもよかったと思えると思います。留学を考えているなら、ぜひまわりの人に留学したい意思を伝え、いろんな伝手を紹介してもらいましょう。留学は、自分自身、家族を含め人生における貴重な機会になること間違いなしです。ぜひとも実現させて、世界へ羽ばたいてほしいです。